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東京高等裁判所 昭和54年(ラ)505号 決定

抗告人

三石武夫

右代理人

千野款二

主文

本件抗告を棄却する。

理由

抗告人の抗告の趣旨及び理由は、「原裁判所は、民事訴訟法第六六二条の二により、売却条件たる最低競売価額を変更する必要があるにもかかわらず、数年前に決定した価額を変更せず、そのままで競売し、不当に低い価額の競落を許可したが、これについて抗告人は不服であるから、抗告申立をする。」というにある。

一件記録によれば、原裁判所は、執行官新海廣安に命じて本件競売不動産の鑑定評価をさせ、昭和四七年九月二五日の評価額、土地につき一、〇九一万九、〇〇〇円、建物につき二五六万八、八〇〇円をもつて、最低競売価額と定めたうえ、同年一〇月二四日午前一〇時競売期日を開いたが、競買人がないため競売不能となり、その後も最低競売価額を順次およそ一〇パーセントづつ低減して、四回にわたり競売期日を開いたが、いずれも競買人がないため競売不能となり、結局、昭和五四年四月六日午前一〇時の競売期日において、さらにおよそ一〇パーセント低減した最低競売価額による競買申出がなされ、右申出に基づき、同月一二日の競売期日において、競落許可決定が言渡されたことを認めることができる。

右認定事実によれば、本件競売不動産の鑑定評価後、右競落許可決定まで、六年六月余を経過してはいるものの、その間に五回の競売期日が開かれたのに、いずれも競買人がないため、順次最低競売価額をおよそ一〇パーセントづつ低減した結果、前記金額となつたものであつて、右価額低減率は、特段の事情のない限り、相当と認められるところ、そのような事情の存在を認めるに足りる証拠はない。したがつて、原裁判所が競売不動産の再評価を命ずることなく、最低競売価額を定めたことをもって、違法とすることはできない(抗告人指摘の民事訴訟法六六二条の二は、執行裁判所が競売不動産の再評価をすべきことを定めたものではない。)。そして、記録を精査しても、他に原決定を取り消すべき違法の点は見当らない。

よつて、本件抗告を棄却することとして、主文のとおり決定する。

(森綱郎 新田圭一 真榮田哲)

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